研究内容
1. 非線形時系列データ解析(2014-)
State space reconstruction (SSR) と呼ばれる手法、およびその応用手法を用いて生態学分野の時系列データの解析を行っています。このデータ解析手法は現在 Empirical dynamic modeling (EDM) と呼ばれており、その応用により短期未来予測・因果関係の検出・相互作用強度の定量などを系を駆動するメカニズムを事前に仮定することなく行うことができます。現在、主に生態学分野での EDM の適用・改良・発展などを進めています。
・こちらのブログで State space reconstruction, Simplex projection, S-map, CCM の解説をしています!
主な関連業績
Ushio 2022 Proceedings of the Royal Society B 289:20212690
Kitayama et al. 2021 Journal of Ecology 109 (2):727–736
Ushio et al. 2020 Ecological Research 35 (1):17–29
Ushio et al. 2018 Nature 554 (7692): 360–363
Chang et al. 2017 Ecological Research 32 (6): 785–796
2. 環境 DNA を用いた野外生態系モニタリング手法の開発と応用 (2015-)
土壌や水中から検出されるマクロな生物由来の DNA (環境 DNA) を利用して生態系内の生物群集にかかわる情報を網羅的かつ簡便に取得するための技術開発およびその応用研究を進めています。
主な関連業績
Ushio 2022 Proceedings of the Royal Society B 289:20212690
Yonezawa et al. 2020 Consevation Genetics 21 (6): 1078–1084
Ushio 2019 Methods in Ecology and Evolution 10 (8):142–1156
Ushio et al. 2018 Metabarcoding & Metagenomics 2: e23297
Ushio et al. 2017 Molecular Ecology Resouces 17: e63-e75
Ishige et al. 2017 Biological Consevation 210: 281-285
3. 森林生態系における植物−土壌相互作用研究(2005-)
森林生態系、主にマレーシアの熱帯林において植物と土壌の相互作用を研究しています。特に植物の生産する二次代謝産物(縮合タンニンなど)が落葉として土壌に供給された時に土壌微生物、および有機物の分解過程がどのような影響をうけるかを研究してきました。さらに、この相互作用が熱帯林の生態系動態(物質循環・樹木群集動態など)に与える影響も明らかにしました。現在はこれら相互作用のより細かいメカニズムを調べています。
主な関連業績
Ushio et al. 2017 Ecological Monographs 87 (1): 105-129
Ushio et al. 2013 Plant and Soil 365 (1-2): 157-170
Ushio et al. 2010 Soil Biology & Biochemistry 42 (9): 1588-1595
Ushio et al. 2008 Soil Biology & Biochemistry 40 (10): 2699-2702
4. 実験系を用いた土壌微生物群集の多様性・機能解析(2010-2014)
土壌微生物群集の機能や多様性、その関係性を明らかにするために室内実験系を用いた研究も行ってきました。また、微生物群集の多様性や機能を明らかにするための方法論の検討なども行いました。これらの研究では脂質バイオマーカー、蛍光顕微鏡、大量シーケンサーなどの技術を利用しました。
主な関連業績
Ushio et al. 2014 Soil Biology & Biochemistry 76: 53-56
Ushio et al. 2013 Soil Biology & Biochemistry 64: 147-154
Ushio et al. 2013 PLos ONE 8 (11) e80320
5. 植物−土壌相互作用の理論的解析 (2008-2011)
植物−土壌の相互作用は基本的に非常に長い時間スケールで進行します。この相互作用が系全体に及ぼす影響を評価するために数理モデルを構築してその挙動を調べてきました。
主な関連業績
Miki et al. 2010 PNAS 107 (32): 14251-14256
Ushio et al. 2009 Microbes and Environment 24 (2): 180-187
6. その他 (共同研究など)
ふとメインテーマから外れた研究も行います。共同研究もやります。これまでにウツボカズラ (Takeuchi et al. 2011 PLoS ONE)、捕食被食関係のおける体サイズ (Nakazawa et al. 2011 Advances in Ecological Research, Nakazawa et al. 2013 Biology Letters)、花と昆虫体表の微生物群集 (Ushio et al. 2015 Scientific Reports)、などを研究してきました。
野外調査経験
- マレーシア、ボルネオ島、サバ州、キナバル山 (2005 – 2016)
- マレーシア、ボルネオ島、サバ州、マリアウ盆地 (2014)
- アメリカ、ウィスコンシン、UW-Madison Arboretum (2010)
- スウェーデン、アビスコ (2011)
- ニューカレドニア、南部州 (2013)
- 北海道、天塩研究林 (2015)
- 近畿地方の水田 (2016 – 2020)
- 香港の沿岸域 (2022 –)
研究費獲得状況
研究代表者として
- 2024-2027年度 RGC General Research Fund (1,323,889 香港ドル) 「香港海域における環境DNAに基づいた鯨類モニタリング手法の確立」
- 2024-2027年度 Marine Ecology Enhancement Fund (273,600 香港ドル [2024年度]) 「DNAメチル化を利用した非侵襲的なシナウスイロイルカとスナメリの年齢推定法の開発」
- (終了) 2020-2023年度 科学研究費補助金・基盤研究 (B) (計 13,300,000 円)
「水域生態系の宿主-寄生者系をモデルとした野外生態系動態の制御に向けた枠組み構築」
- (異動により2022年8月で終了) 2018-2022年度 京都大学白眉プロジェクト研究費 (計 12,650,000円 [概算])
「生態系予報に向けた野外生態系自動モニタリングシステムの構築」
- (終了) 2016-2019年度 科学技術振興機構 (JST)・さきがけ (情報協働栽培領域) (計 40,000,000 円)
「野外の生物群集ネットワークを利用した植物動態の予測」
- (終了) 2014-2016年度 科学研究費補助金・若手研究 (B) (計 3,100,000 円)
「森林での植物-土壌フィードバックを駆動する土壌病原菌の同定と分布パターンの定量化」
- (終了) 2012-2013年度 公益財団法人発酵研究所 (IFO) ・一般研究助成 (計 3,000,000 円)「花粉に付着する微生物の検出とその応用」
- (終了) 2011-2013年度 科学研究費補助金・特別研究員奨励費 (23-586) (計 2,400,000 円)「微生物の移動分散と機能的多様性を考慮した陸域生態系モデルの構築:理論と実証」
- (終了) 2010年度 日本学術振興会研究者海外派遣基金 (計 1,060,840円)
- (終了) 2009-2010年度 科学研究費補助金・特別研究員奨励費 (21-1526) (計 1,400,000 円)「熱帯山地林をモデルとした土壌微生物群集による森林生態系動態の制御機構の解明」
分担者として
- (所属上の都合によりメンバー変更) 2022-2026 年度 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B)) (代表:酒井章子) (計 20,020,000 円 [予定])
「栽培化は種子微生物叢をどう変化させたか:東アジア起源のダイズを材料とした検討」
- (終了) 2019-2022 年度 科学研究費補助金・基盤研究 (B) (代表:宮正樹) (計 14,050,000 円)
「多地点・高頻度環境DNA観測に基づく魚類群集構造の変動様式と形成・維持機構の解明」
- (終了) 2015-2017年度 科学研究費補助金・挑戦的萌芽研究 (代表:近藤倫生) (計 2,900,000 円)
「個体群時系列データ解析に基づく群集ネットワーク構造の推定」
今まで用いた研究手法
以下についてご質問がある方は、連絡をいただければ答えられる範囲でお答えします。
- 基礎的な土壌分析 (pH, 湿度, C/N)
- 土壌栄養塩の定量 (Pの連続抽出法, 無機態 N)
- 土壌, 葉のポリフェノール分析 (総フェノール, 縮合タンニン)
- 土壌呼吸速度の測定 (LI6400, INNOVA)
- 土壌酵素活性の測定 (p-nitrophenol, MUB基質を用いて吸光度で測定)
- 土壌微生物群集の分析 (土壌の脂質分析, CARD-FISH, 大量シーケンス解析)
- 植物の葉からの縮合タンニンの抽出 (有機溶媒からカラムで精製)
- 植物の根の窒素固定活性の測定 (アセチレン還元法, ガスクロ)
- 植物の有機態Nの獲得能力の評価 (安定同位体トレーサー)
- 野外での樹木実生の成長率の推定 (実生プロット, 毎年の追跡調査)
- 野外でのイネの成長率調査 (草丈, SPAD)
- イネの RNA 抽出
- イネの収量調査
- 環境 DNA のサンプリング (GF/F フィルター・ステリベクス)
- 環境 DNA の抽出・PCR (魚類・哺乳類・鳥類・昆虫など)
- 環境 DNA の疑似定量的解析 (定量 MiSeq)
- 環境 DNA シーケンス (IonPGM, MiSeq, iSeq, MinION)
- 数理モデルの構築・解析, 数値シミュレーション
- R を用いたデータ解析 → 2010年10–12月の統計セミナーで使用したファイル
- Python を用いたデータ解析
- C/C++ (勉強中)
- シーケンスデータ解析 (Claident, QIIME, UPARSE, DADA2, phyloseq)
- 非線形時系列データ解析 (Empirical Dynamic Modeling)